この黒留袖を一目見て“素敵だな”と魅了される方は、きっと『辻が花』のお着物が好きな方ではないでしょうか。着物産地で有名な新潟県十日町。その街の友禅の老舗『関芳』が手掛けたブランド『ことほぎ』のお着物です。こちらは、あらゆる伝統技法が用いられた美しい絞り染め『辻が花』の黒留袖となります。辻が花とは、様々な花が交わるという意味も持ちますが、草花文様を染め出した絞り染めに繊細な描画、刺繍など伝統的な技法を施した美しい染め物のことをいいます。室町時代から伝わる気品に満ちた染めのお着物です。生地を絞った跡があるので、でこぼこした立体的な表面が特徴で、この立体感がなんといっても辻が花の魅力。美しい草花が繊細なタッチで仕上げられるので、百花繚乱な花々が絢爛豪華にみえながらも、どことなく儚げな美しさを漂わせます。裾線にかけて、様々な植物文様があしらわれていますが、目に留まるのは桃の花と藤です。桃は不老長寿を与え、邪気を追い払う霊木の花であり、藤は平安貴族の藤原氏の象徴として尊ばれている高貴な文様。しっとりと美しい花文様は、お着物にエレガントな雰囲気をもたらします。また、松・梅・鶴は、おめでたいとされる吉祥文様の中でも格の高い文様。伝統を重んじる慶事の門出にも相応しい文様です。まるで日本美術の名品を見ているような黒留袖。お祝の席を一層華やかにしてくれるでしょう。