牡丹唐草、向かい鶴の他、有職文様（ゆうそくもんよう）の数々を散りばめた、お祝いの場に相応しい黒留袖です。蔓性の唐草は、強い生命力を表すものとして、着物や帯のみならず、器、建築などあらゆる物に様々に描かれてきました。そんな唐草の中でも、この黒留袖に描かれているのは牡丹唐草。牡丹は、富と美しさを象徴する、百花の長です。そして、菱形を形作るように向かいあう向かい鶴菱（むかいつるびし）は、有職文様である菱形と吉祥文様である鶴を組み合わせた、めでたく、格の高い文様です。さらに、立涌（たてわく）、花菱といった有職文様の数々を組み合わせ、帯状に配しています。有職文様とは、公家の装束などに用いられてきた文様で、現在でも格の高いものとして扱われるため、黒留袖との相性が良い文様です。このように、日本の伝統的な文様の数々が描かれた黒留袖ですが、唐草文様はギリシャやローマにルーツがあると言われる、大陸を経て日本に伝わった文様であるため、どこかオリエンタルな雰囲気もあり、洋風の場面にも調和してくれます。第一礼装である黒留袖だからこそ、古典的な文様で格調高く装いたい、そんな方に自信を持ってお薦めする装いです。