通好みのシックな地色に、贅沢な刺繍が施された逸品。フォーマルでありながら、ひと味違った特別感を醸しています。モチーフは水辺の風景。しぶきをあげる波文が幾重にも重なる様子は、永遠や不滅などを思わせる吉祥柄で、おめでたい席に喜ばれます。洲浜に葦が茂る光景も日本画のような風情。刺繍ならではの温かみも感じられて、個性が光ります。葦の間で遊んでいるのは、写実的に描かれた雀。さえずるような仕草を見せていたり、今にも飛び立とうと羽を広げていたり、一瞬のシーンが巧みに表現されています。雀は鳥の中でも特に身近な存在。ふっくらと丸みを帯びた姿が、富や繁栄をイメージさせ、昔から工芸品や着物の題材として用いられています。一針一針で羽の色味が微妙に表現されていて、金糸の縁取りも繊細。清らかな水辺の風景が、独特の色目と刺繍で印象的に仕上がっています。