流れる鬘帯（かずらおび）が美しく描かれている色留袖。鬘帯におめでたい絵柄が色とりどりに描かれています。鬘帯とは能を舞う際に頭部に巻き付ける装飾を施した帯です。その帯を鉢巻し面をつけ舞を踊ります。神にささげる優美な舞は古式豊かで高貴なものとされています。鬘帯にはさまざまなおめでたい絵柄が描かれています。風になびく絹布に描かれている「牡丹」の花は、まっすぐ伸びる茎からこぼれるような大輪の花を咲かせることから「富貴（ふき）」や「幸福」を意味し「百花の王」と言われています。また女性の美しき座る姿を表現しているのも有名ですね。ともに描かれている円を４分の１づつ重ねた文様は「七宝（しっぽう）」といわれその名と通り７つの宝を意味しています。円形は「円満」や「富貴」や「無限の子孫繁栄」を表し古来より好まれて描かれています。七宝とは金・銀・瑠璃・波瑠・珊瑚・真珠・瑪瑙（めのう）を意味しています。さらに目をひく亀の甲羅に似ている「亀甲」とその姿が美しく神秘的な「鶴」はともに「長寿」を意味し古来より良い柄として長年愛されています。「生命力の豊かさ」を感じ幸せを祝う場に選ばれてきたのがよくわかりますね。