伝統美を際立たせる深い濃紫地に、大きな金箔の瑞雲や笠松文を配した振袖は、吉澤織物が擁する古典友禅の本格派「吾妻徳穂／踊りの世界」の一枚です。吉澤織物は新潟県十日町にある織物メーカー。江戸時代にルーツを持つ明治30(1897)年創業のメーカーです。吾妻徳穂は、江戸時代から続く日本舞踊吾妻流家元の3代目。織物メーカーと家元3代目がタッグを組んで生み出したブランドは、古典文様を愛する多くのファンに支持されています。この振袖の上前正面、おはしょりの下から伸びる2本の細い熨斗(のし)のような縦のラインは、立ち姿をすっきり美しく演出します。上前中央には牡丹や菊の花が詰められた金の瑞雲を置き、牡丹の花びらを金糸刺繍でふちどっています。そのため歩くたびに、刺繍が生み出す微かな光沢と金箔が優雅な輝きを放ちます。さらに、膝下には水色の笠松文を2つ配置。ひとつにはキュートな花橘が、もう一つには桜が詰められています。濃紫地には、愛らしい宝尽くし文様の分銅や打ち出の小槌などが置かれ、竹の葉が清々しさをプラス。地色や文様に微かに浮かび上がる地紋も優美です。文様の取り合せもさることながら、刺繍や箔の技法を駆使した振袖は、女性美を輝かせるために世に送り出された一枚です。優美なこの振袖をまとうだけで、エレガントで洗練された女性にメタモルフォーゼできるかも。